1980年台前半、砂糖の国際価格が暴落したことにより、その経済構造が砂糖産業の みに支えられていたネグロス島(フィリピン・ビサヤ諸島)は、厳しい飢餓に見舞 われた。当時は日本の民間団体も協力してネグロス・キャンペーンと呼ばれる飢餓 救援活動を行っていた。それから30年が経つ今、ネグロスの農業が劇的に変わろう としている

写真:ネグロスのサトウキビ畑

ネグロス州は未だフィリピンで最も貧しい地域のひとつであり、ネグロスの経済構 造は、現在も砂糖産業に依存している。フィリピン政府は1988 年、小作農民の所得 向上を目指して、農地を農民に配分する「総合農地改革プログラム」を開始した。 実際、アキノ政権下で は170 万ヘクタールの土地が配分され、ラモス政権からエス トラーダ政権下においては 290 万ヘクタールが農民に配分された。しかしながら、 土地配分を受けた農民は自力で農業を行う知識経験が不足しており、農地を利用で きず、農村部では配分された農地をまた地主に返してしまう等の問題が起きてい た。また農村にとって必要な支援(インフラ、組織化、金融、技術など)がないた め、農民の生産性向上や生計改善が課題となってきた。このことから、フィリピン 政府は土地配分を受けた農民支援の実施を決定し、農地改革省がその実施機関と なった。農地改革省は、全国900 カ所以上において農地改革コミュニティ(ARC)を 認定。各コミュニティを開発の基本単位として、農民組織のの統合的な支援を推進 してきた。

同省は現在、農地改革コミュニティ連携経済支援事業(ARCCESS)と呼ばれる農業 共同体支援プログラムを行っており、特にネグロス地方では、上記の課題を解決す るために農地改革省と農業支援系NGOが連携して、農業技術導入や農業振興開発を行っているという。実際当プログラムは全国規模で行われており、今後日本の農業 技術・農機ビジネスに商機をもたらす可能性がある。

今回、Digima Newsではフィリピン農地改革省ネグロス州のステフェン・M・レオ ニダス支局長及び、アントニオ・A・デルソコロ副支局長にお話を伺った。

同プログラムでは農地をコミュニティ(ブロック)に分割して支援を行っており、 各ブロック毎に農業開発プランを提供している。各ブロックは競争を行うよりも隣 のブロックと連携して技術や成果を共有し合う関係にある。プログラムでは、5年単 位でコミュニティの目標を立て、農業組合の成長、農民の所得、インフラサポー ト、技術指導、マーケティング戦略、灌漑、環境保護に至るまであらゆる指標を立 てて総括的に監督し、4半期ごとに評価する。この状況下で現在最も重要視されてい ることのひとつに、生産性の向上と、そのための農業機械化があるという。

ネグロスの場合は、例えばサトウキビのコミュニティに関して言えば、生産物収穫 の人手が不足しており、またコスト的な問題もあることから、早急にサトウキビの 収穫機械が必要であり、ひいては産業全体の機械化を行いたいという。ネグロス農 地改革省レオニダス支局長は「日本と同様、フィリピンの農村も高齢化が始まって おり、若い世代の農業離れが進んでいるため、今後益々人手不足になる。そのため 機械化は重要になる。農機に関してポイントとなるのは、コスト、品質、デリバ リーのスピードの3つだが、安いとか高いということではなく、コスト以上の効果が 生み出せるかどうか重要であり、それをクリアできれば農民コミュニティーと良い 関係がつくれるはずだ」と語り機械化への期待を述べた。また「更に重要だと思う のは若者に対する教育で、農業の大切さを教えていく必要がある。農地改革省のプ ログラム下で若い世代によって運営されている組合も少しずつではあるが出てきて いる。農業技術を身に付けた農家の子供や技術者が増えてくれば、農村の収入も上 がっていくだろう」と語り、農業教育の重要性を強調した。

フィリピンでは、農産業全般の機械化が、サトウキビのみならず、コメを始めとす るあらゆる作物で必要となっている。フィリピンの農業機械化率を1ヘクタール毎の 馬力(HP)で示した指標があるが、これによると、フィリピンが1.23HP、インドが 2.22HP、タイが4.20HPとなっており、フィリピンは農業機械化において非常に遅 れを取っていることが分かる。ちなみに日本は18.87HPであり、フィリピンの約15 倍である。これはフィリピンの農業生産性の低さに直結しており、コメの1キロ辺 りの平均生産コストは、インドネシアが8.4ペソ、タイが5.6ペソ、フィリピンが11 ペソと、非常に割高になっている。 (参考資料:フィリピン農業省、Freedom Inc.、Philippine Center for Postharvest Development and Mechanization)

またインタビューにおいて関係者から、「中国製の農機などは長持ちせず、また壊 れたときのメンテナンスなど問題が多い」との話を聞くことができた。農民が修理 しようとしたが説明書が中国語で理解できず、何もできなかったというケースもあったという。その点、日本の農機は高品質で壊れにくいという評価になってお り、日本の農業サービスプロバイダーに対する期待が高まっている。ポイントとな るのは、農機そのものよりもメンテナンスや部品スペック、そして技術指導などの ソフト面だ。農機、農業技術のサプライヤーが、農地改革省の進めるプログラムと うまく協力関係を構築し、継続的にサポートできる仕組みを整えることができれ ば、日本の製品を長期間に渡って輸出できる可能性がある。

ステフェン・M・レオニダス支局長(写真中央) アントニオ・A・デルソコロ副支局長(写真左)

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